特徴
- 低温増幅反応(41℃)
- RNAを特異的に増幅
- 高感度(2-10 コピー)
- 高効率(>109-10 in 90 min)
- 高正確(High fidelity: >99.7 %)
- 簡易検出(増幅産物:1本鎖 RNA)
- 遺伝子発現量解析に有用
NASBA法の原理
- プライマー:2種類
- 酵素:3種類(AMV-RT、RNaseH、T7RNAP)
- 増幅産物:アンチセンスRNA
試薬構成
- プライマーを除く、NASBA増幅用試薬セット
- 高安定性:ヌクレオチド、酵素類が凍結乾燥品
- 研究用試薬
- 試薬構成:3試薬,各10本(5回×10)
- NASBA試薬:‥‥dNTPs,NTPs(凍結乾燥品)
- NASBA溶解液:‥‥トリス緩衝液,DMSO(溶液)
- NASBA酵素試薬:‥‥AMV-RT,RNaseH,T7 RNA polymerase(凍結乾燥品)
用語解説
AMV Reverse Transcriptase
Reverse transcriptase (RT) は、DNA polymerase の一種で RNA依存性DNA polymerase活性及びDNA依存性DNA polymerase活性を持つ酵素である。即ち、一本鎖のDNAまたはRNAを鋳型とし、5’→ 3’方向に相補的なDNAを合成する。プライマーは RNA、DNA共に使用可能である。この酵素はRNase H活性を併せ持つ。AMVとはAvian myeloblastosis virusのことであり、本酵素は AMVから精製されている。
RNase H
RNase Hは、DNAとRNAのハイブリットRNAのみを分解するRNA分解酵素である。1本鎖 RNA は分解されない。酵素活性には2価のイオンが必須であり、RNAのホスホジエステル結合を解裂して5’-リン酸末端と3’-OH末端を生成する。逆転写酵素にも活性が確認されている。本酵素の活性は広く生体内に同定され、DNA複製に関与すると推定されているが、詳細な生物学的役割は不明である。
T7 RNA polymarase
大腸菌ファージT7の遺伝子産物で、約20塩基対からなるファージ固有のプロモーター配列を認識するRNA polymerase。5’→3’RNA polymerase活性を持ち、T7プロモーター配列を含む2本鎖の DNAを鋳型に、NTPを基質としてプロモーター下流の鋳型DNAの相補的RNAを合成する。
使用方法
20μL定性NASBA反応
準備として必要な試薬および器具
試薬 | |
---|---|
1 | プライマー(2種) 標的RNAに相補的なオリゴヌクレオチド アンチセンスプライマー5’側にT7 RNA polymerase配列付加 5’-AAT TCT AAT ACG ACT CAC TAT AGG GAG-3’ |
2 | Nuclease-free water:NASBA酵素試薬溶解用 |
器具 | |
---|---|
1 | 0.5mL マイクロチューブ(RNase-free) |
2 | ヒートブロック(65℃, 41℃) |
3 | ピペットマン等 |
4 | フィルターチップ |
5 | ボルテックスミキサー |
6 | 卓上遠心器 |
測定プロトコール(20μL定性NASBA反応
1 | NASBA溶解液へ2種類プライマー添加 (各0.4μM) 60μL | 0.4μM×100μL/*μM= μL * プライマーストック液濃度 |
---|---|---|
2 | 1)添加,NASBA試薬溶解(NASBA反応試薬調製) | |
3 | 2)NASBA反応試薬分注 | 10μL/本×5 本 |
4 | 検体(RNA溶液)添加 | 5μL/本 |
5 | インキュベーション(変性) | 65℃,5分 |
6 | インキュベーション(アニーリング) | 41℃,5分 |
7 | 6)インキュベーション中に酵素試薬溶解 | 30-55μL water/本 |
8 | 7)酵素試薬添加(*温度低下注意) | 5μL/tube |
9 | インキュベーション(増幅反応) | 41℃,90分 |
10 | 反応終了後,検出までNASBA産物保存 | -20℃以下 |
応用例
Competitive NASBA
原理
既知濃度のQA(内部標準物質)を同時に増幅することで、コピー数未知の検体中のRNA量が定量可能です。QAは、WTの配列の一部を変更したcompetitorです。
相関性(Relative RT-PCR法/Competitive NASBA法)
MDR-1遺伝子の発現量をCompetitive NASBAとRelative RT-PCRで測定しました。
Relative RT-PCRは、House Keeping Geneである、β2-ミクログロビン遺伝子の発現量を1.0とし、MDR-1遺伝子の発現量を示しました。
検量線(Competitive NASBA法)
Competitive NASBAでの検量線を示しました。WTが102 copies~107 copiesまで良好な直線性が得られました。
増幅・検出には、Sandwich hybridization法を原理としたHybrigeneを用いました。
RNA共存の影響(定量NASBA)
共存RNAの影響を調べるため、健常人から抽出したTotal RNA1μg(ターゲットとなるMDR-1発現レベル:0)を添加し増幅・検出を行いました。
10copiesから106copiesまで共存RNAの影響は認められませんでした。